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深化と進化へ、二つの布石。
今、大広はどこへGOするのか?(前編)

平成最後の年、93日。大広は二つの新会社を同時に立ち上げた。
その名は「顧客時間」と「澤田設計事務所」。ここ数年、大広はアクティベーションデザイン®「顧客を、共につくり、味方にする」を掲げてきた。この二社は、それをさらに深化と進化させる尖兵と位置づけられる。なぜ、この二社か?大広は今という時代をどう捉え、どこへ向かうのか?大広の安藤専務、顧客時間の共同CEO代表取締役・岩井氏、澤田設計事務所の代表取締役・澤田氏に話を聞いた。

左から 安藤輝彦・岩井琢磨・澤田善郎
左から 安藤輝彦・岩井琢磨・澤田善郎

—まず前提として、大広や「顧客時間」・「澤田設計事務所」では、消費者でも生活者でもない「顧客」という言葉を使っています。これについて詳しく教えてください。

安藤:顧客という言葉には、ものすごくビジネスの視点が入っている。大広がアクティベーションデザイン®で「顧客を味方にする」って言っていることは、企業の経営基盤を強くするっていうことなんだよね。

岩井:博報堂DYグループでは「生活者」と言っているんですが、消費者を生活者視点で見るということは、マーケティングにおいてすごくイノベーティブなことなんですよね。加えて今は、自分たちの顧客が誰なのかということを、企業がもっとフォーカスして見ることができるようになっている。さらに企業と顧客の距離が近くなっているから、顧客が一緒に新しい価値を共創してくれる存在になってきている。必ずしも企業がつくったパッケージを顧客に売るんじゃなくて、顧客と対話して、そのことによって企業の価値を新しく変えていく。そうすると「我々はこうだ」って思っていたビジネスモデルも、実は変えないといけないかもしれない。そういう意味で、いま改めて顧客を基点にすることは、より具体的で強力な発想なんです。

澤田:顧客は、もともとダイレクトマーケティングビジネスから引っ張ってきている言葉ですよね。大広って40年ぐらい前からダイレクトマーケティングをやっていて、その歴史と深さは競合からしたらかなり優位性が高い。つまり、消費者を顧客化することに慣れている。CRMも含めて、お客さまのレスポンスの中で反応を取りながら顧客化してきた。そして、それをベースにコンテンツをつくるということを、ずっとやってきたDNAがあるんです。

株式会社澤田設計事務所 代表取締役社長 澤田善郎
株式会社澤田設計事務所 代表取締役社長 澤田善郎

安藤:アクティベーションデザイン®を考えた当初は、そういうダイレクトマーケティングの強さをどういう風に発展させるかと考えて、それが「顧客を、共につくり、味方にする」という流れになっていた。顧客をつくるということは、顧客が何を望んでいるかがよく分かるということ。顧客の中にいろいろな価値がたまっているから、そこにいろいろ情報があるということもわかる。それを見抜いて、次の活動につなげていこうという提案をしていく。それが、大広が次の事業展開をするときのキーになってきている。今回二社をつくったのは、ロイヤル顧客をつくることを超えた、さらにその次へ行こうとしていることの布石。

澤田:顧客をベースに事業を形成していくという感じですよね。

安藤:そう。逆に言ったら、顧客を知らない、顧客を味方にしない事業って、もう無い。そういう意味で、これまで言っている顧客とは重さが違ってきている。そこに取りかかっていて、既にいささかの知見があるとすれば、次への切符を持っていることになる。それをテコにして次の未来をつくっていこうよと。そういう流れでこの二社は、おまえらちょっと旗揚げろ、と言って揚がった状態。

岩井:確かに大広が顧客基点に立っていたのは前からなんですけど、それがこれから、もっと強みになっていくと思います。なぜかというと、一つはやっぱり、チャネル(顧客への到達経路)に大きな変化が起きているから。顧客の購買行動自体が変わってきているので、それに伴ってオンラインとオフラインのチャネルが融合したり、メディアとしての店舗が生まれたりしている。チャネルの主導権をさらに持つことができれば、より顧客に近づくことができるっていう状況なんです。これは、マーケティング環境として生まれている変化ですね。
 もう一つは、ブランディングが変わってくる局面に来ているから。今まではブランディングって、メディアやコンテンツを通して期待値を「伝達」によってつくっていく活動が大きかったと思います。でも、今はもう、顧客の体験によってブランドをつくるという、「体験」によるブランディングが中心になって来ている。今までもブランドの価値は顧客でつくられると言われてきましたけど、本当にそういう状態になってきていて、お客さんがどういう体験をしたかということでしか、ブランドがつくれない。オンラインとかオフラインに情報が溢れているので、自分の身体的な体験で得たことが、その人にとってのブランドになるという状態にどんどんなる。企業も「伝達じゃなく体験です」なんて概念的に言っていても駄目で、「自社が提供する体験価値とは何なのか」を、具体的に説明できないといけない。そういう意味でも、顧客との接点を直接持っていたり、顧客のことを直接知っているというのは、マーケティングでもそうだし、ブランディングにおいても、非常に重要になってきている。

株式会社顧客時間 共同CEO代表取締役 岩井琢磨
株式会社顧客時間 共同CEO代表取締役 岩井琢磨

安藤:顧客のほうが、もう、企業より強いんだよね。情報を持っているし、今、岩井が言ったような体験の中で、いろいろなサービスや商品に対する評価眼とかも顧客は持ってるから、企業が勝てない状況が生まれている。今は社会という記号が出てきていて、それに対して顧客がどういう風に反応するか?という意識が、企業にはものすごく強い。それに対して裏切るような行動はできない。顧客をちゃんと見つめていかなきゃいけないということになっているよね。顧客にとっての価値、顧客がもたらす価値の両方を大事にしようと。それらの価値が、商品開発やサービス開発、プロモーションなど様々な企業活動のエネルギーになるんじゃないかと思う。顧客を基点とした価値創造がない限り、素晴らしい提案っていうのは世の中にできないんじゃないかな。そういうことに挑戦しようというのが、これからの大広になるんじゃないかと。だから「顧客」というのは、すごく大事な二文字だよね、大広にとって。

澤田:そうですね。ただ購入するだけのお客様ではなく、情報発信力をもった価値あるお客様、つまり「顧客」という位置付けになっていますよね。つまり「顧客」に価値がある。

—ある意味、顧客はパートナーみたいな感じでしょうか?

澤田:と思いますね。ただ、味方になればそうなるし、裏返せば裏返しなんで。

安藤:これはどこかの社長の言葉なんだけど、「顧客を味方にしない企業は滅びる」とまで言っている。それぐらい顧客っていうものの存在が大きいの。マーケティングの基本は顧客創造だもんね。

岩井:僕は、外部セミナーで登壇するとき、冒頭に「顧客基点を理念に掲げてる会社の方、手を挙げてください」って聞くんですが、だいたい全員挙げるんですよ。次に「うちは顧客基点だという人は、そのまま手を挙げといてください」って言うと、ほとんど全員降ろすんです。お題目だけになって、仕組みができてないという課題意識がとても強い。

安藤:いや、そうだと思うよ。だから、そこに俺たちのビジネスチャンスがある。それを実際に回していける、動かしていけるっていう。

岩井:そのための仕組みをつくっていけるっていうことですよね。

—今までおっしゃったような流れがあって、今回、新たな二社を設立されたと思います。でも、なぜ大広の社内組織ではなく、別会社にされたのですか?

安藤:やっぱり情報力ということでもあるんだよね。社内で組織を作っても、社内での情報で閉じる。別会社として外へ出すと、情報が外に向かうし、強い。何をやりたいのかという大広の発言として、それが世の中に見えてくる。大広って、どういう会社か見えづらいという意見が世間にある中で、こういう会社ですよってアピールできる。せっかくアクティベーションデザイン®の良い事例があっても、外からはわからない。それは、ものすごくもったいないっていう気持ちがあったわけ。だから、こうやって次の時代に新たに向かわなきゃいけないってなったときに、大広もどんどん発信をしていかないと、と。情報や人は発信力の強いところに集まってくるものなので、外の知恵や人を呼び込める装置としても期待している。

株式会社大広 取締役専務執行役員/チーフクリエイティブオフィサー 安藤輝彦
株式会社大広 取締役専務執行役員/チーフクリエイティブオフィサー 安藤輝彦

さらにいうと、顧客時間に共同CEOとして奥谷さんが来てくれたことが象徴的だけど、外にいるたくさんのプロやタレントと一緒に仕事をする場をつくっていきたい。
澤田のとこだって、いろんな得意先だったり、外のプロダクションとかから人が来たいって言っていて、それが新しい場として機能することになる。一つの運動体をつくるというような可能性がそこに出てくる。
それがうまくいったら、新しい会社の有り様がそこに見えてくる可能性があるじゃない?そういう外とのネットワークを作っていく場としての会社っていうのもあるわけで。そんな新しい会社のカタチがそこに見えてきたら、どんなにかいいかなってことなんだよな。

後編に続く

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