Vol.21 Share on Facebook Share on Twitter

クールジャパンではなく、こじらせ系。
大広発のサブカル系ユニット「COJIRASE LUNCH BOX」。

アニメやゲーム、イラストなどが急速に発展し、サブカルチャーがもはやサブの枠を超えつつある時代。大広から、サブカル系クリエイター集団「COJIRASE LUNCH BOX(コジラセランチボックス)」が誕生した。彼らは二次元(イラスト・ゲーム等)と三次元(アイドル等)のサブカルチャーに精通し、各業界のクリエイターたちと広く深いネットワークを持つ。広告会社から生まれたサブカル系ユニットだからこそ、できることがある。これまでの活動と今後の展開について、チームメンバーの2人に詳しい話を聞いた。

左から、大広WEDO 大阪クリエイティブDivision 高原龍彦 / 大広 大阪顧客発掘局 宮本祐輔

—まず、COJIRASE LUNCH BOXを結成した経緯について、教えてください。

宮本:最初は、スマホゲームの開発サポートからプロモーションまでを実施するという大広の仕事がきっかけです。その前に僕が仕事でwebアニメをディレクションしたことがあり、「アニメ系に強いんなら」ということで、アサインされました。そこにアニメ・ゲーム好きの秋山をメンバーに巻き込んで、高原にも途中から入ってもらいました。
この3人が一つのチームで仕事をして、知見もたまって人脈もできたので、これを活かして他社にないチームを結成したら戦う力になるんじゃないかと思いました。でも僕ら3人は二次元のイラスト・ゲーム・アニメ寄りで、いわゆる三次元のアイドルなどの知見が弱かったんですね。だから、アイドルオタクとして業界的にも有名なガリバーさんに声をかけて4人でチームを結成しました。

—オタク、かつ、クリエイター集団ということでしょうか?

宮本:そうですね。僕らはチームとして、作品を深く理解して愛せるオタクの側面と、作品の素晴らしさをファンだけでなく顧客(一般生活者)にも広く伝えられる広告会社の側面の両方を持っているのが特徴です。オタクの気持ちだけだと偏ったものになっちゃいますし、かと言って広告会社がにわか知識だけで作品をビジネスに利用したりすると、炎上したりする。そこをうまくちゃんと取り持てると、クライアントも喜ぶし、サブカル系のクリエイターさんも喜んで、ファンや顧客(一般生活者)にも楽しんでもらえる。そういうものをきちっと作れるバランス感覚を持つのが、このチームの強みかなと思います。

—このチームが戦う力になると手応えを感じたのは、いつからですか?

宮本:今、日本国内のイラストレーターを僕以上にアサインできる広告会社の人間はいないと思います。僕は大阪に住んでいるんですが、このゲームの仕事をやってから、イラストレーターさんでちょっとでも話を聞いてくれる人がいたら、埼玉でも広島でも会いに行って打ち合わせしたり、ご飯行ったり、コミケにも欠かさず挨拶しに行っています。そうやって人脈を増やして、ゼロからコネクションを徹底的に築き上げました。実際にコンシューマゲーム会社のアートディレクターさんが僕の仕事を見て、「すごい面子を揃えているね」とアサイン力を認めてくださったので、そのあたりから手応えを感じましたね。

あの子のとなり

高原:僕は「あの子のとなり」というボードゲームをコミケで頒布して、反響があったときですね。用意した分がすべて見込み通りに頒布できて、むしろ足りなくなるぐらいでした。そのときの反響も良くて、4人それぞれのいいところが出せた結果なのかなと思いました。

宮本:あともう一個言うと、コンシューマゲームもスマホゲームも、開発とプロモーションって基本的に分業制が多いんですね。ゲームはゲーム会社のデザイナーさんが作って、プロモーションはゲーム会社の広報の人が外部の代理店とかとやっている。それを一気通貫できるところは、たぶん業界を見渡しても少ないんです。その点、僕たちは開発とプロモーションを両方やって、しかもそれを比較的きちんとうまく回していた。このチームだったら、他にもそういう仕事ができるなっていうのはありましたね。

—COJIRASE LUNCH BOXのフラッグシップは、「あの子のとなり」だと伺います。これを作ることになった経緯を教えてもらえますか?

宮本:「あの子のとなり」は、COJIRASE LUNCH BOXとしてコミックマーケットに参入しようという話から始まりました。コミックマーケットいわゆるコミケは、国内最大の即売会イベントで、日本中のあらゆるオタクが集まるサブカル関係の一大発表の場です。

高原:そうですね。それで、コミケで何を発表するか考える会議がありました。そのとき宮本さんに「高原くん、最近ハマってるものないの?」と聞かれて、いろいろ話した中で「ボドゲ(ボードゲーム)も好きですね」と言ったら、「ボドゲ、いいやん!」となり、作ろうという話になりました。
その後、メンバー4人でボードゲームカフェに行って企画会議したときに、たまたまガリバーさんがアクリルスタンドを持ってたんですね。アイドルの写真とかイラストが小さなアクリルに印刷されていて立つやつで、平面的なフィギュアみたいなものなんですけど。それでボードゲームを作ったら、アイドルが好きな人も、描かれたイラストが好きな人にも喜ばれるんじゃないかという話になりました。

宮本:そこから、さらにアイデア出しで、ああやこうや言ってるときに、高原くんがポロッと「昔あった席替えって、良かったですよね」と言ったんですね。それを皆が「席替え、めっちゃいいやん!」って拾って。それで、さっきのアクリルスタンドと席替えをうまく擦り合わせて、ボードゲームを作りました。

—キャッチコピーは、「もう席替えをすることができない全ての大人に贈る」でしたよね?

宮本:はい。このコピーも僕らが考えましたし、このボードゲームには僕らのチームのできることが全部詰まっていると思います。僕らはデザイナーだったり広告会社の人間なので、どこかに一点特化というよりは、総合力が高い。ボードゲームには企画力、デザイン力、制作力が集約されているのと、イラストレーターさんとかアイドルの方と一緒に面白いものが作れそうだと思ったことが、チームのフラッグシップとして「あの子のとなり」を作った理由ですね。

—web番組も配信されているとのことですが、これはCOJIRASEで制作しているんですか?

宮本:そうですね。去年の5月から、だいたい月1ぐらいのペースでYouTubeとニコニコ動画で配信しています。イラストレーターとかコスプレーヤーなどの職業って、どうやったらなれるかステップが全然分からないじゃないですか。僕には、そういった人気の職業の方々とネットワークがあったので、その方々に進路相談をするラジオ番組がしたいと思い、「こんなんやりたいと思ってるんです」と、いろんな人に話してたんですよ。そうしたら、出版社の玄光社さんが「あ、それすごく面白いですね」と言ってくださって、「まずは、イラストレーターさんにインタビューをするweb番組を一緒にやりましょう」となりました。また、玄光社さんと親交の深い、デザイン・クリエイティブ製品を取り扱う総合商社のTooさんにもご協力いただけることになり、COJIRASEとの3社共催という形でスタートしました。

—番組の反響はいかがですか?

宮本:イラストレーターおよびゲーム業界・出版業界で、すごい反響があります。今、イラストレーターさんが一番お仕事されているのはゲーム業界と出版業界なので、そこでの認知度も上がってきていますね。

高原:再生回数は平均1万回位です。イラストレーターさんがその場で絵を描くわけでもなく、話しているだけで再生回数1万は多いかなと思いますね。

宮本:イラストレーターさんがプロになる過程とか、イラストレーターとして食べていくには、みたいな話をするので、ちょっとマニアックなところにフォーカスした番組なんですね。どうしたらうまく描けるとかの話じゃない。イラストレーターさんにここまでフォーカスした番組って今までなかったので、すごく評判がいいです。「COJIRASE LUNCH BOXの宮本です」って自己紹介すると、まだ一度も出会ったことがなくても、「あ、知ってます」とか「見てます」という方は増えてきてますね。

—チームとしての活動は、大広の社員として仕事する際にも、やはり良い影響を与えるのでしょうか?

高原:やっていることに、やっぱり可能性は感じています。今はYouTuberなどもいて、会社組織というよりは個人とかチームとか、そもそもコンテンツ力を持っている人が勝ち進める時代。ネットで有名になり、知名度が上がるということは、普通にこれから仕事にもつながっていくと思います。

宮本:今、どこの会社もYouTubeって見過ごせないですし、YouTuberの企画とかをみんな提案していると思います。でも、実際にYouTubeの番組をトライ・アンド・エラーしてやっているチームってなかなかない。COJIRASEは、ずっと並行してTwitterでのプロモーションと、web番組でYouTubeでのプロモーションをやっているんですけども、やっぱりやらないと気付かないことも、たくさんあります。だから今は、実際に仕事で提案や説明をするときに、自信を持って話ができますし、説得力も増しますよね。
あと、さっきも言ったようにオタクコンテンツって炎上しやすかったりするので、そこのさじ加減が難しいんですね。たとえば、アイドルやイラストレーターさんを起用したプロモーションは、ファンからすると冒涜というか、悪用されているように見える場合もある。そこはすごくケアしながらやっています。そういう知見を持っているところも多くはないのかなって。

—ご自身がオタクであるが故に、どういう風に接したり、発信していけばいいかが分かるということですかね?

宮本:そうですね。ガリバーさんはもう完全に自分自身がオタクなんで、そこは心得ているんですね。あとは秋山が二次元オタクなんで、僕は秋山に聞いたり、イラストレーターさんに「これってされたら、嫌ですか?」とか相談するようにしています。聞いた上で、やる・やらないをジャッジしたりする。だから、広告業界でもイラストレーターさんを起用した炎上案件があったりしますが、僕らがやっていたら、そうなってないと思いますね。

—今後はCOJIRASE LUNCH BOXとして、どういう活動をしていきたいですか?

高原:一つ目の『あの子のとなり』では、ボードゲーム好きと、アイドル好きと、二次元好きな人が出会って、僕たちの知見だけじゃなくて、ファン同士の知見も深まったと思っています。二つ目に作ったレコードジャケットも、イラストレーション好きと、音楽好きが一緒になりました。そういう今までありそうでなかった要素同士を組み合わせて、お互いの分野のファンが喜ぶ、お互いにリスペクトをちゃんと持った上で制作物などを作りたいです。そして、その架け橋みたいな存在にCOJIRASE LUNCH BOXがなっていけたらいいですね。

宮本:今後やりたいこととしては、僕らはやっぱり開発からプロモーションまで一気通貫できますし、それをやることによって、そのコンテンツのファンも喜びながら、認知拡大していくこともできると思っています。今もCOJIRASE LUNCH BOXとして大広の仕事はしていますが、そういった、開発からプロモーションまで一気通貫した案件の相談がもっとCOJIRASEに来て、それを大広として受けるというのが今の目標ではあります。

COJIRASE LUNCH BOX
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