Vol.25 Printing Share on Facebook Share on Twitter

「気持センシングラボ」対談 第9回
「心×身体×考え方のクセ」から捉える、生活者インサイト

人々の行動を促しているのは、言葉にならない「気持ち」や「思い」である—-。気持センシングラボは、株式会社大広が中心となり、人々の声にならない声を身体から発生される反応データを利活用することで生活者理解を深めていくプロジェクトです。2018年8月にプロジェクトを発足させ、約1年と半年が経過しました。プロジェクトに参画している会社も6社(株式会社大広、SOOTH株式会社、株式会社ヒトクセ、株式会社ビデオリサーチ、株式会社SMN、エイベックス株式会社)となり、それぞれの知見やノウハウなどのリソースを相互活用し、脳波、視線、心拍、表情といった生体反応データに向きあい、意味づけ・解釈を繰り返しながら、難易度の高い領域に対してチャレンジをし続けています。
今回は、そのプロジェクトの取り組み事例としての実証実験の一つをお伝えします。クライアントが直面する問題を当該プロジェクトメンバーの「知」を結集し、課題へと昇華させ、リソースを掛け合わせることで発見したことを株式会社ビデオリサーチひと研究所の所長である亀田憲氏と大広の山口大道とがつづります。

本記事は、博報堂DYグループ“生活者データ・ドリブン”マーケティング通信”に掲載されたものを転用しています。

「商品・サービスは“魅力的”なものとして届いているか?」という問い

今回の実証実験において対象としたカテゴリーは、「金融領域」であり、我々のチームと関係性のある大手生命保険会社にご協力いただいた。すでにビジネスの実績があることに加えて、気持センシングラボが掲げるビジョンに共感いただけたことが大きな要因であった。

生命保険会社のマーケティングチームは、特にコミュニケーション領域で顧客との好意的な関係性強化のために手腕を振るっている。中でも優先順位の高いタッチポイントがweb領域であり、あらゆる顧客の認知・理解促進、好意形成といった要素を高める施策にリソースを割いている。チーム姿勢は「データ主義」を徹底しており、あらゆる仮説をデータに基づき検証するという、地道にみえるが最も堅実なアプローチで追求している。

そんな中、マーケティングチームのリーダーは、まだ検証ができていない点があり、もどかしさを感じていた。それが、「顧客に提供する商品・サービスは”魅力的”なものとして届いているのか?」という問いである。Web上で数多くのトライ&エラーを重ね、結果として成功に導いてきた自負がある。しかしながら、発信した情報は顧客の目にしっかりと留まり、興味や理解を促し、納得感を得て行動喚起されているのかを把握・分析することが必要である、という課題意識をもっていた。

「ひとセグ(セグメント)」×「生体反応データ」でクリエイティブの進化に挑戦

数ある生体反応データの中から、視線データを活用した実証実験を提案した。Web広告において集客装置となるランディングページ(以下LP)の構成要素を顧客の視線データを利活用することで、評価する手法となる。以下、具体的な調査手法と考察を展開していく。
さらに、研究・調査にあたって、「生体反応」を用いることに加えて、性年代別ではない「考え方」のクセによるセグメント「ひとセグ」を活用したターゲット設定と分析をした(ひとセグについては連載第4回をご覧ください)。

「考え方のクセ」のタイプは全部で6種類あり、選択する商品や届きやすいメッセージ・表現がセグメントにより異なってくる。この「ひとセグ(セグメント)」と前述の「生体反応」を組み合わせることで、より生活者の「気持ち」を捉えたLP制作を試みた。

保険との相性が良いターゲットは「雑学ロジカル」

実証実験をすべきターゲット(対象者)の条件を決めるために、インターネットによるプレリサーチを行った。選定基準は対象商材である「保険」との相性である。
将来設計への真剣度が高い「生活費・介護費用など切実な不安を抱えている」や「株式や投資信託を積極的に検討し、老後資産の形成に意欲的」といった項目への回答割合が高いセグメントは「雑学ロジカル」であった。さらに、その出現率は16%あり、ある程度の市場ボリュームが予測できるため、「雑学ロジカル」を実証実験のターゲットに設定した。
なお、雑学ロジカルの「考え方のクセ」は、機能や性能などのスペック情報が大好き。何事も徹底的に情報収集し、” 意味のある”ものや” 理屈に合う”ものを選択。そして、物事を理性的に捉え、商品に対するうんちくや情報を欲するという考え方のクセを持つのが特徴である。

視線調査では、調査対象者に視線の計測機能のある特殊な眼鏡をかけてもらい、前述の「雑学ロジカル」の「考え方のクセ」を考慮したLPをスマホで閲覧してもらった。
視線がどこに注がれているのか、その滞在する長さはどの位なのかを計測。さらに、視線計測後は、アンケートでLPのどの部分に興味を示したかを聴取することで、「生体反応」とアスキングによる「気持ち」の両面で、クリエイティブを評価するようにした。

「雑学ロジカル」の考え方のクセを考慮したLPページの制作

雑学ロジカルの「考え方のクセ」を考慮したLPは次の5つのブロックに分かれ、ブロック別に興味度を聴取した。
具体的には、(1)「メインコピー」で目をひきつけ、(2)「カスタマーボイス」の事例により「自分ゴト化」を促すことで「商品情報」の興味度を上げ、(3)「商品情報」では、図や表を活用しながら保険の必要性や商品特徴を紹介し、(4)「企業情報」では企業の特徴を文字情報でしっかりと説明をして、(5)最後に、「よくある質問」で契約への不安を払拭させる、というストーリー構成となっている。

視線測定と興味度によりわかったこと

想定したストーリー通りに「視線」や「気持ち」は動いたのであろうか。ブロック別に視線の長さと興味度について分析をしてみた。

滞在時間には、(2)カスタマーボイスと(3)商品情報が高く、LPのメインコンテンツがしっかりと読まれていて、クリエイティブが機能していたことがわかる。ただし、(4)「企業情報」については、滞在時間が短く改善が必要であり、その改善策の一つとして、データや図を活用した表現に変更することが考えられる。

興味度についても、(3)商品情報が高く、データやグラフを活用した特徴紹介が雑学ロジカルの「考え方のクセ」を捉えることで興味度を喚起した結果といえる。 ここで注目すべきは、(2)カスタマーボイスは「興味度」が低いのに対して、「滞在時間」は長い点である。2つの「指標」が連動した反応になっていない。
その理由は、(2)カスタマーボイスにはデータ・図、うんちくなどが乏しいため「雑学ロジカル」の興味喚起はできていないが、他者事例は「気になる」情報ではあるため「しっかり」と読まれはした、と推察できる。 さらに、続く(3)商品情報の「興味度」が全ブロックの中で最大である。これらから、(2)カスタマーボイスの情報がしっかり読まれた結果、保険が「自分ゴト」化されたため、(3)商品情報の興味度を押し上ることができた、と考えられる。
仮に興味度だけの分析・判断であれば、その値が低い(2)カスタマーボイスは改善もしくは削除を検討することになる。しかし、「視線」も合わせて計測したことで、生活者の声にならないインサイトやLP内での役割が浮き彫りになり、価値のあるブロックと判断することができた。

「生体反応」×「気持ち(アスキング)」×セグメントでクリエイティブを進化させる

このように、「生体反応」だけでも「気持ち(アスキング)」だけでもなく2つのデータとセグメント(「考え方のクセ」)を組み合わせることで、「心」と「体」の両面で生活者インサイトを捉えたクリエイティブ開発が可能となる。
今後は、これらの知見やノウハウをデジタル広告の配信などにも応用していき、活用の幅を広げていく予定である。

●調査概要 ■プレリサーチ調査概要
調査方法:web調査
調査ブロック:全国
調査対象者:男女30-59歳
サンプル数:1,057s
調査時期:2019年7月

■視線調査概要
サンプル数:男女35-49歳 20s
対象者条件:
①老後の蓄えへの不安あり
②ひとセグ「雑学ロジカル」
③スマホ所有
調査時期:2019年9月

“生活者データ・ドリブン” マーケティング通信
http://seikatsusha-ddm.com/
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