Vol.38 Share on Facebook Share on Twitter

「顧客体験コレクション」対談 第2回
いのちをつなぐ、心をつなぐ、みんなの助産所。

顧客体験コレクションは「顧客価値」を掲げ、実行する大広社員が、顧客として価値を感じた「顧客体験」を投稿し、共有する社内SNS。ひとり一人の感動や発見をカテゴリごとに蓄積し、顧客価値を体内化するためのツールとして、日々アップデートされている。(詳しくは、ダイGOoooo!Vol.37を参照)
今回は顧客体験コレクションに「顧客のために何ができるのかを常に考え、実行に移している」と投稿された、兵庫県伊丹市にある小山助産所の小山千里氏をお招きしての対談。顧客体験コレクションの起案者で3児のパパの中間陽介氏、自らの感動体験を投稿した育休中の岸本尚実氏が、小山助産所 小山千里氏の想いに触れ、地域に根ざした助産所が取り組む「顧客体験」の話を聞いた。

— 小山助産所の投稿を、岸本さんはたくさんされたそうですね。

岸本:はい。私は1人目の出産後に自治体主催のイベントで小山さんと出会って通い始めました。それから2人目までずっと入り浸ってます(笑)乳腺炎などの身体のケアや子育て相談などの心のケアを中心に、ママと赤ちゃん向けのベビーマッサージや産後ヨガの会なども開催されてます。小山さんのネットワークを活用して、授乳フォトの撮影、赤ちゃん連れOKのお花教室、草木染めのワークショップもされているんです。イベントの後はママたちがおしゃべりできるようスペースを開放してくださっていて、産休・育休ママの集いの場になってます。

中間:小山先生がいかに顧客であるお母さんたちと向き合っておられるかを岸本の投稿で知りましたが、正直、え?ここまでやられてるの?と驚きました。早速ですが、まず先生が助産師を志したきっかけを教えてください。

小山:私の母がNICU(新生児特定集中治療室)の看護師をしていたことがあって、幼い頃からその頃の母の写真を何度もみていたんです。看護師を目指して3年制の看護学校へ行きましたが「看護師になるなら、母のように赤ちゃんに接する仕事がしたいから、助産師まで取ろう」と卒業後、助産学校に入り直しました。助産師になって総合病院で約8年、その後に伊丹の助産所で働きました。そこでは今と同じようにゆっくり1時間かけてケアをしたり、妊娠中から出産後、育児までの一連の流れをずっとママたちと一緒に過ごせて、すごく楽しかったです。

中間:僕の中では助産所の役割は出産までというイメージだったので、小山助産所のように、産前・産後のケアをものすごく大事にされているところがあること自体がすごいなあと思うんですよね。

岸本:そうなんですよ。小山さんの子育て教室に参加するまで、全力で子育てをケアしてくれる、小山助産院みたいな場所があることを知らなかった。子どもは産んだら医療機関など外部からのケア的なものは終わりで「あとは家族で育ててください」ってなると思っているママも多いと思うんです。小山さんのところに通って、「そうじゃないんだ。地域とか助産師さんとか、すごくいろんな人が協力してくれて子育てってできるんだ」と思えたんです。

中央下:小山助産所 助産師 小山 千里 氏 
右下:コーポレートプランニング本部 人事局(育児休職) 岸本 尚実

— 小山先生ご自身も4人のママなんですよね。

小山:自分も子育てで結構大変だったから、他の方なんて私より何百倍も大変だろうなと思いました。私は結構いい加減なところもあるので、育児も家事も手を抜きながらできるタイプだけど、「もっともっと育児をちゃんとしたいな」って思うお母さんたちってすごく多い。だから、一緒に考えたり、私でなにか手を差し伸べられることがあるならやりたいんです。

中間:小山助産所は産前・産後の部分のお世話で、実際出産するのは病院でという事業形態なんですよね。

小山:そうなんです。いまのテナントではお産は扱えなくて。以前勤めていた助産所はお産もやっていて「助産師ってすごく楽しい、この仕事が好き」と心から思えた場所だったのですが、残念ながら閉院してしまって。その時に4人子育てしながら病院に勤める選択肢が私にはなく、ご自宅にお伺いしての産前・産後ケアを出張専門で1年ほどやったんです。助産所って今はとても数が減っているので、地域の助産師としてなんとか残りたかったんです。そうしているうちに、現在の場所を使わせていただけることになり、店舗でのケアもできるようになりました。“切れ目のない支援”とよくいわれますが、うちの場合はお産のところは病院になるので、残念ながら切れ目ができてしまうのですが。

中間:そうおっしゃいますが、アフターケアの部分で切れ目のない支援をされている感じがします。

岸本:小山さんはInstagramやFacebook、LINEでもママたちとつながり続けてくださってます。小山さんのところにはまだ行ったことはないけど、SNSはフォローしてるって人もいると聞きます。小山さんがSNSでヨガの様子とかイベントの予告なども、もうほとんど毎日、すごくまめにアップしてくださってて、それを見ているだけでもちょっとほっこりするし、切れ目なく情報が入ってくるから、ずっとつながっている感があります。小山さんの愛がなせる技だと思ってます。

— そもそも助産所がどんなところか知らない方も多いのでしょうか。

小山:自分たちが出産に関わるまで知らないという方がほとんどだと思いますね。うちの場合はお産をしていないので、産後に母乳育児をしていて、お乳がでなくなったということで、“母乳マッサージ”で検索してこられる方が多いです。妊娠中でいうと、つわりやむくみ、貧血といったマイナートラブルをお薬ではなく、自分の自然治癒力を引き出して緩和していきます。
お母さんの産む力と赤ちゃんの産まれる力を大切にお産まで持っていくのが、そもそもの助産所の役割。ママとたくさんお話しして、生活をお聞きしながら助産師が関わっていくんですが、そんなケアを受けたい、続けたいというママが来てくださいます。助産所のこと、もっと知ってもらえたらなと思います。

中間:なんだかうれしくなりますね。こんな方がいらっしゃるなら、早めに知れたらよかったな。もう一人、がんばれそうだな。

小山:いま中間さんが言ってくださったように「あ、もう1人産めるかな」ってママに思ってもらえたら、私、すごく幸せで。もしなにかあったら気軽に頼れるところがあることで、“あともう一人”を考えていただけるなら、とてもうれしいし、少子化対策にもなるかもですね。

中間:いま3人子育てしてますが、お義母さんにも助けてもらいながら悪戦苦闘していて「大変なのが当たり前」と思っているところを、ひとり一人に合ったサポートが受けられるんですね。ちょっと妻に報告しておきます。

岸本:もうお一人、いいですね。

— 岸本さんは投稿数1位に輝き、そのインセンティブで七五三撮影を体験されたとか。

岸本:希望を叶えていただきました。カメラマンは小山さんとお付き合いのある方で、数え年で3歳の娘に0歳児も一緒だと大変だろうということでアシスタントの方と来てくださいました。カメラマンの方もママなので、気遣いがすばらしくて。おもちゃであやしてなだめてくだって、素敵な写真を撮ってくださいました。当日は、なんと小山さんが来て、下の子をずっと抱っこしてくださってました。

中間:助産所の先生と通っているお母さんの関係を超えてませんか?

小山:あれは仕事ではなく、ほぼ個人として。カメラマンもよく知った間柄ですし、岸本さんは助産所のお客さんですし、スケジュールが合えば顔を出して、何かお手伝いしようかと思ったので。ちょっとでも喜んでもらえたら、楽しんでもらえたらと。それだけです。

助産所でじっくり時間をかけて行う妊婦検診

— お母さんとの関係が密な小山助産所ですが、コロナ禍で変化はありましたか?

小山:個別指導が増えましたね。世の中的に病院の検診や相談もゆっくりできなくなっていましたし、相談できる場所も減って、時間も短くなって。助産所だとほぼプライベートで指導できますし、外出しづらい方にはおうちを訪問させていただいてゆっくりとお話をしました。不安なんかもお聞きして。

岸本:コロナが広まって市の子育てひろばが閉まったり、ママ向け講座が中止になったりしていたんですが、小山さんは緊急事態宣言の時にはほぼ毎日無料でオンラインヨガやママ座談会をしてくだってました。助産所でのベビーマッサージやヨガ教室も、いつもより人数を絞って回数を増やし、かなり早い段階から再開してくださって。ステイホームで子ども以外、誰とも接することができず家に閉じこもってる状態だったので、本当に救われました。

中間:人数を制限されると回数が増えて小山先生は大変だけど、それで助けられたお母さんはたくさんいるよね。
僕はいま通販会社を担当していて、“「この商品を購入した」「このサービスを受けた」というお客様にはこの時期にこのDM”といったようにお客様をフォローしていくプログラムが確立されているのですが、小山助産所はお客様のニーズに対して、その場で応えていくという感じですか。

小山:その場その場ですね。お話をお聞きして。1人で育児していたら煮詰まるだろうなと思ったら「ベビーマッサージやるから、また来てね」ってお声がけしたり。ちなみに、ベビーマッサージは授乳をやめたママやミルク授乳の人でも気軽にきてもらえるようにしたくて、最初に始めました。ママのためのヨガは、私も個人的にヨガをやっていて、先生に「この時間は自分のことだけに集中していいよ」といわれて「あ、子どもたちのことばかり考えなくていいんだ。自分のために、自分自身を感じて、意識を集中していいんだ」って。その時間を持てて、育児がラクになった経験からなんです。

中間:ママにどれだけよろこんでもらえるか、ラクになってもらえるか。すべてはそこに主眼を置いてらっしゃるんですね。

— 最後に小山先生の夢を教えてください。

小山:私の一番の夢は自分が取り上げたお子さんのお子さんを取り上げること。いのちが産まれ、お子さんの成長を見守って、お子さんが大人になって、また次のいのちをつないでいく。くるくる回る感じをイメージしています。なので、出産も可能な、産み育てられる新しい施設をつくりたいです。
あと、関わった赤ちゃんが思春期になった時、親に話せないことを話せる大人がいることって、とても大切なんです。近所のおじさんおばさんでもいいのですが、助産所でその役割を担えたらと思っています。成長発達過程では必ず第三者の大人の存在が必要だと思います。

岸本:なんだか保健室の先生みたいですね。お昼休みにおしゃべりにしに行くと、優しくいろいろ受け止めてくれるような。

小山:以前勤めていた助産所で関わったお子さんも結構遊びに来てくれてますよ。ここを始めてからだと、卒乳ケアで来ていたお子さんが10歳くらいになっていたり。子ども向けの性教育の教室「いのちのお話会」というイベントもやっているので、中学生・高校生の子たちも来ます。外部の性教育のお話では大学生とも関わっています。

中間:夢といいつつ、思春期ケアについてはすでにいろいろ実施されているわけですね。 最後になりますが、この助産所がお客さんにとって、どんな存在でありたいですか。

小山:うちの助産所のテーマは「へそからへそへ いのちをつなぐおてつだい」をテーマにしています。自分の命を感じて、自分自身を感じて、それをつないでいける助産所にして、通ってくださる方とそんなふうにつながっていけたらと思っています。
おへそってお母さんとつながっていた証、命がつながっていた証。幼稚園や小学生のお子さんに、いのちのお話会で「寂しい気持ちになったらおへそを見てね。目にみえないつながりがあるよ。不安になったら、おへそに手を当てて自分を感じてみてね」って話しているんです。

岸本:うるっとしちゃいます。

小山:今日はご縁をいただき、こうしてみなさんともつながれました。

中間:こちらこそ、ありがとうございました。岸本の投稿のおかげで、小山先生のことを知れました。これからも「顧客体験コレクション」でいろんなつながりをつくったり、広げていけたらうれしいと思っていますので、大広のみなさんにはぜひ活用いただきたいです。岸本さんもまた投稿してね。

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