Vol.32 Printing Share on Facebook Share on Twitter

無理をせず、みんなでおいしくCO2排出量削減。
SDGsのアイデアコンペでシルバーを受賞!
東京第2ブランドアクティベーションプロデュース本部 第2プロデュース局 大沼 光二郎

パンデミックによって世界中で経済活動の停滞が起きた2020年は、大幅なCO2排出量の減少を記録した。広告・コミュニケーション関連従事者を対象に、パンデミック終息後もCO2排出量を抑えていくためのアイデアを募った日本経済新聞社主催の「日経SDGsアイデアコンペティション」。121のエントリーの中からシルバーに輝いたのが、大広・大沼光二郎氏と博報堂プロダクツ・中津太一氏が提案した「BEEF or CHICKEN or PLANT ?」だ。受賞したアイデアのエピソードを中心に、コンペでペアを組んだ中津氏と出会うきっかけとなった、大広と博報堂との協業についても語ってもらった。

大広 東京第2ブランドアクティベーションプロデュース本部 第2プロデュース局 大沼 光二郎

— まずは、受賞おめでとうございます! もともと大沼さんは環境問題やSDGsに関心が高かったのですか?

大沼:そうでもないんです。このコンペに参加したことで、自分ゴトとして多くの気づきを得ましたが、それまでは問題への関心が人より特別強かったわけでもないんです。日経SDGs コンペ自体も、昨年3月まで在籍していた協業チームの同僚だった博報堂プロダクツの中津君がみつけてきて、軽い感じで「一緒にやりません?」ってLINEが来て、「せっかくだし、やろうか」となって。スタートは軽い感じだったけど、課題発表から締切まであまり時間がなかったので結構ヘビーでしたね。仕事が終わって、夜から明け方までが調べ物をしたり、コンペの企画を考える時間。2人ともクリエイティブ系ではなく営業/プロデューサー畑ということもあって明確な役割分担はありませんでした。それぞれで企画を考えて、持ち寄ったものに意見を出し合ってまとめていくスタイルで進めていきました。

── 受賞された「BEEF or CHICKEN or PLANT ?」の概要を教えてください。

大沼:CO2排出量の課題解決というとエネルギーや交通・輸送インフラを思い浮かべることが多いのですが、他のチームとは被りにくい課題設定で勝負したいと思いました。オリエンの中で「日本では気候変動に対する行動を“負担”と捉える人が圧倒的に多い」との説明があったのですが、たしかに自分自身に置き換えても無理をしたり、我慢するエコは続かない。みんな毎日食事はするし、食べることが好きな人、関心が強い人は多いので、ひとり一人に行動を促す際に「食」に関連した施策なら取り入れやすいのではと考えました。

実は畜産のCO2排出量って、思っている以上に多いんです。コロナ禍でのCO2排出量削減の主な要因として、交通をイメージする人は多いと思います。たくさんのCO2を出していそうですもんね。でも、実は交通より畜産に伴うCO2排出量の方が圧倒的に高い*。コンペの企画書にも書きましたが、平均的な車を1日運転した場合のCO2排出は3Kg。一方、ハンバーガー1個分の牛肉を生産する時にかかるCO2は75Kgなんです。
* ARTICLE/ 01 NOV, 2017 A Taste of Sustainability – Food and Catering at COP23

── ハンバーガー1つのお肉で車の25倍ものCO2が! 初めて知りました。

大沼:驚きますよね。先ほどのハンバーガーのCO2排出量はコスタリカの熱帯雨林伐採に伴う試算なのですが、牛は巨体なので飼育のために多くの森林を伐採することになりますし、餌などの生産コストもかかります。世界の人口と新興国の食肉消費量は増加傾向なので、畜産のCO2がさらに増加していくと予想されています。食肉に関連した新たなシステムを作ることができれば、CO2排出量削減の大きなインパクトになると考えました。そこで着目したのが植物由来の代替肉、プラントミートです。

コンペで提案したスキームはこうです。まず学校給食で一定期間、プラントミートを使ったメニューを出します。その段階では子どもたちには何も情報は伝えません。そしてプラントミートを一定期間食べてもらい、終了時に「食べていたのは実は植物で作ったお肉だったんだよ」と種明かしをする。その後、新たな食育として、畜産のCO2排出量や植物性代替肉について学ぶ場を設けるという流れです。受賞に際しては、給食で体験させ、学びへとつなげる連続性と実現性の高さが評価されたようです。

( https://www.canneslionsjapan.com/nikkei-sdgs-competition2020/より抜粋 )

── 食事を提供する場はいろいろある中で、なぜ給食を選ばれたのですか?

大沼:当初は機内食でプラントミートを提供するアイデアで進めていました。「BEEF or CHICKEN or PLANT ?」というタイトルはその名残でもあります。企画を考えるスタートから「そもそも食べ物を選ぶ時に、それが環境貢献につながるっていうマインド自体が根付いていないよな」と感じていて。機内食での肉の選択の中に代替肉が加わるのはインパクトがあるし、信仰や主義だけではなく、環境のために肉を食べないという選択もあることを広く伝えたいと考えました。本質を突いたアイデアではあったかと思うのですが、実現性やスケール感などの観点から、最後の最後に企画を見直し、練り直すことにしました。

── 子どもを対象にしたことで、企画よりが未来志向でハッピーな感じになりましたね。

大沼:別々で考え直しをしたのですが、案をバッと出し合ったら、お互いのアイデアの中に給食がありました。「2人ともが思いつくなんて、実は面白くないんじゃないか」とふと思ったりもしましたが、企画をふくらませやすいし、実施した時の絵が思い浮かべやすかった。やっぱりこれだろ、と。機内食から給食に変えたことで、タッチポイント的にもそうだし、あとで種明かしをするというサプライズ感も加わって良い感じにまとまったかなと思います。

── そもそもですが植物性の代替肉って、おいしいんですか。

大沼:おいしくなさそうというイメージがあるの、わかります。大体、プラントミートについては知らない人や興味のない人が多いし、どこで売っているかもわからない。だから広がらない。世界的には代替肉市場は活性化していますし、その傾向は今後さらに加速すると思います。自分はコンペのためにお店で買ったり、通販で取り寄せたりして、いろんなものを食べてみました。正直、おいしくないものもあります。でも、味わいや食感がかなり良く、高い満足感が得られるプラントミートも存在します。例えばIKEAだと、レストランにエンドウ豆などが原料の「プラントボール」のメニューがあるし、冷凍食品にもありますよ。ぜひ一度、代替肉がどんなものか食べてみてください。

── 受賞のお祝いはされましたか?

大沼:協業チームで一緒だった博報堂の人たちが、自分と中津をお祝いしてくれました。
昨年春でそのアカウントでの博報堂と大広との協業は終了して、その半年後に自分は異動があり、担当からも外れてしまったのですが、当時の協業メンバーとは連絡を取り合っていて、今でもよく話をしていますよ。思い出に残る仕事もたくさんできましたし、いい仲間にも出会えました。協業を経験できて本当によかったです。

── その協業チームでの仕事のことを少しお聞かせいただけますか。

大沼:その時の協業は、同じクライアントを担当している大広メンバーが、それぞれ担当商品別に分かれて博報堂チームにジョイントするかたちで、3年間そこで仕事をしました。チームには博報堂の営業/プロデューサーやクリエイター、博報堂プロダクツのメンバーも大勢いて、自分は大広の人間だし、まさに「博報堂DYグループチーム」な編成でした。商品ごとのチーム編成なので、むしろ大広メンバーで固まって仕事をすることがなかったです。

担当していた商品は嗜好品で20歳以上の方が対象となるため、広告にも様々な制限・制約がありました。対象外の方にはプロモーションできないので、ターゲットをかなり絞ったコミュニケーションをすることになりますし、「広告会社なのに広告ができない」状態なわけです。通常の案件とは全く違う考え方が求められました。難しい面もあるけど、おもしろかったです。

すごく小さな狭い空間での販促もやったし、フェスであちこちを飛びまわっていました。ある商品のキャンペーンではブランド体験ショップの立ち上げから運営にもたずさわりました。基本的には人対人の現場仕事が中心。その時に一緒にイベントやプロモーションを担当していたのが、今回のコンペの相棒の中津です。自分は昨年10月に今の部署に異動したのですがデジタル案件がかなり多くて、現在は現場仕事とは真逆な環境にいます。デジタルについては勉強中で、積極的にインプットしているところです。

── 大広と博報堂。企業カルチャーの違いなどを感じたことなどはありましたか?

大沼:個人的には大きな差は感じませんでしたが、魅力的な人が多かったですし、仕事の取り組み方でユニークだと思ったことがいくつかありました。通常はオリエンがあって考え始めることが多いと思うのですが、当時のチームでは週に1回、テーマを設定しないミーティングがありました。フリートークでいろんな話をするのですが、そこで出た話を練って、企画にまとめて、クライアントに提案したことが何度かありました。

また、ある年のチームの方針で「仕事に遊びを10%まぜてみよう」と言われたことも心に残っています。自分が興味を持っていること、得意な分野を少しエッセンスとして取り入れてみようといった意味です。エッセンスなので、本当にちょっとですが、モチベーションにもなるし、仕事を楽しむ上でも大切な部分かなと思いました。自分の例だと、アーティストとコラボした商品を作りたいと思っていたところ、それが実現できました。商品の世界観と親和性が高いアーティストをキャスティングし、オリジナルステッカーを作りました。

── 最後に、受賞後の変化と今後の抱負をお願いします。

大沼:受賞後、大きな変化は特にはまだないです。アイデアが評価されて、シルバーに選ばれたのはもちろんうれしいのですが、これで終わりではなく、いつかこの企画が実現できることを願っています。冒頭にもお話ししましたが、このコンペが環境問題を自分ごととして捉える契機になりましたので、この先、環境問題に限らず、ソーシャルな課題の解決など、社会に貢献できる仕事ができればと思っています。そのために自分の領域を広げていきたいです。あと、広告会社の人って自分のカラーを持っている人が多いので、自分も「色のある営業/プロデューサー」になりたい。元々、とても好奇心が強くて、新しいことが大好き。やったことがないことにチャレンジしたいタイプなので、広告然としていない仕事、従来の広告の枠には収まらない仕事に取り組んでみたいですね。

Daiko WEDO DAIKO SUMMER CAMP FES AD+VENTURE 博報堂DYホールディングス “生活者データ・ドリブン”マーケティング通信 Daiko Tokyo Office