Vol.24 Printing Share on Facebook Share on Twitter

「気持センシングラボ」対談 第8回
「アウトドアメディア×生体反応データ」の可能性とは

脳波、視線、表情などの身体反応から人々の気持ちや感性を分析し、マーケティングの新しい可能性を目指すプロジェクト「気持センシングラボ」。そのメンバーに、博報堂DYグループでアウトドアメディア(ODM)の広告を手がける博報堂DYアウトドアが加わりました。ODMの視点によって気持センシングラボの可能性はどう広がっていくのか。また、気持センシングラボの取り組みはODM広告にどう生かされるのか──。プロジェクトのまとめ役である大広の山口大道が博報堂DYアウトドアの薗田和斉氏、秦雄治氏と語り合いました。

本記事は、博報堂DYグループ“生活者データ・ドリブン”マーケティング通信”に掲載されたものを転用しています。

秦雄治、山口大道、薗田和斉
左: 株式会社博報堂DYアウトドア デジタルプロデュース部 / 交通メディア部 プラナー 秦 雄治氏
中央:株式会社大広 顧客価値開発本部 東京第2顧客獲得局 小澤チーム プロデューサー 山口 大道
右:株式会社博報堂DYアウトドア デジタルプロデュース部 薗田 和斉氏

アウトドアメディアの広告効果をいかに測るか

山口:気持センシングラボは、生活者にとって本当の意味で「心地よい」マーケティングとは何かということをテーマにさまざまな取り組みを続けています。ODM(アウトドアメディア)は生活者とのリアルな接点をつくれるという点で、気持センシングラボのテーマと相性が非常にいいと思っています。僕自身、大広に来る前にODMを手がける広告会社にいたこともあって、以前からODMのプレーヤーと何か一緒にやりたいと考えていました。二人は博報堂DYグループに入ってまだ数年ですが、今はどんな仕事をしているのですか。

薗田:私は入社3年目で、博報堂DYアウトドアのデジタルプロデュース部でODMのDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する仕事をしています。デジタル広告とODMの組み合わせや、データを使って広告効果を測定する仕組みづくりに取り組んでいます。

:私は入社1年目で、同じくデジタルプロデュース部の所属です。同時に交通メディア部にも所属しているため、メディアとクライアント双方とのお取引があり、どちらにとってもメリットのあるソリューションをつくるのがミッションであると考えています。

山口:ODMにおける、データを使った広告効果測定の方法とは、具体的にどのようなものなのですか。

薗田:現在いろいろな方法が試されています。例えば、顔認識カメラを使って交通広告の接触者数を測定するとか、Wi-Fiで人の動きを把握するといったやり方は現在の技術でも十分に可能です。

山口大道

山口:データの取得と活用には、どうしてもプライバシー保護の問題がからんできますよね。

:そこはもちろん十分に配慮すべきだと思います。データをとるにしても、クラウドにはアップしない、個人情報とは紐づけないといった工夫が必要です。クライアントにとっても生活者にとっても納得感のある仕組みをいかにつくるかが大きな課題ですね。

生活者の立場に立って広告価値を把握する

山口:効果測定の最初の取りかかりは、行動データになるのでしょうか。

:生活者の動線を把握するということですよね。デジタル広告ではオンラインでの生活者の動きを把握するというのが当たり前になっており、最近はオフラインでも位置情報で生活者の行動データを把握して配信ができるソリューションがあったりもするので、ODMでも同じようにオフラインの動きをデータで把握して、それをもとにプラニングする仕組みづくりが進んでいます。しかし、同時にODMにおいてデジタル広告と同様の考え方でデータを取得したり枠の売買をしたりすることが、果たして正解なのかという問題意識も私たちはもっています。

薗田:行動データの活用はもちろん重要だと思います。しかし、ODMにはODMの特性があるわけです。山口さんが言うように、生活者とのリアルな接点があって、五感に訴える情報発信ができるのがODMの強みです。その点ではインターネットメディアとは異なる効果測定の方法もありうるのでないかと私たちは考えています。

山口:気持センシングラボでは、脳波や視線の動きなどから得られる生体反応データに着目しているわけですが、ODM広告の効果測定にどういった生体反応データが活用できそうでしょうか。

:例えば、通行数などのデータには、通行している人たちの感情などの要素はまったく反映されません。もし、そこに生体反応を取得する仕組みを取り入れることができれば、通行している人のうちのどれくらいが本当に広告によって心を動かされているかとか、逆に無関心な人はどのくらいいるのかといったことがわかるはずです。

薗田:ODMは体験価値を提供できることも特徴の1つだと思うのですが、実際にその価値が生活者にどう捉えられているかを測定することができれば画期的ですよね。ODMの場合、どうしても面の大きさとか、広告の設置場所などで広告価値が判断されるケースが多いのですが、生体反応をとることができれば、広告出稿時に「そこにどんな人がどれくらいいたか」だけでなく、「その広告によって生活者にどのような心の変化を起こせたか」という一段深い広告価値を把握することができるようになります。それによって、これまでになかったプラニングも可能になると思います。

山口:気持センシングラボで現在取り組んでいるのは、フィジカルにアプローチすることによって、声にならない声や、表にあらわれない感情を把握するという方法です。ODMはまさしくフィジカルなメディアなので、生活者のフィジカルとダイレクトに結びつきやすいと言えますよね。ODM広告と生活者の「心地よさ」の関係を明らかにすることができれば、人々の動線に合わせた効果的な広告の配置や、新しい空間設計の方法なども見えてくるかもしれません。

広告における「匂い」の活用の可能性

山口:薗田さんから「五感に訴える情報発信」という話がありましたが、従来のODM領域で使われてきたのは主に視覚と聴覚です。それ以外の方法にはどういうものがあると考えられますか。

:私は福岡出身なのですが、新幹線の博多駅に降りると、クロワッサンの甘い匂いが漂ってきて、その匂いを嗅ぐと「故郷に帰ってきた」という感覚になるんです。匂いには、記憶を呼び起こしたり、感情を刺激したりする力があると言われています。その力を使った広告展開ができないかなと以前から考えていました。

山口:それができるのは、確かにODMの魅力ですね。アウトドアではありませんが、例えば、映画館で流す映像に合わせて匂いを出すことを突き詰めていきたいですね。匂いがあるときとないときで脳の反応がどう変わるかを測定すれば、映像と嗅覚の組み合わせの効果のエビデンスが得られると期待しています。

薗田:匂いのカートリッジを入れてファンで散布するシステムはすでにありますからね。

山口:例えば、香水やコスメなど香りが重要な商品の広告における嗅覚効果が証明されたら興味深いと思います。しかもそれをアンケート調査などではなく、身体の反応で明らかにするということですから、本人すら自覚していない新たな発見につながると考えています。

「論理」と「非論理」の組み合わせが生み出す価値

山口:気持センシングラボの可能性については、どう考えていますか。

:多様なプレーヤーが集まっているという点に大きな可能性を感じています。しかも、それぞれがやりたいことを持ち寄って、何かを創り出そうという熱気がありますよね。私自身、まだビジネスの経験は浅いのですが、ビジネスの世界ではかなり珍しい取り組みなのではないでしょうか。

薗田和斉

薗田:プレーヤーが多様なだけでなく、使える可能性があるテクノロジーや調査・測定の方法も多様ですよね。私は理系なので、科学的な方法でエビデンスを出すことを目指している点にも大きな魅力を感じます。

山口:既存の異なるもの同士の組み合わせからアイデアは生まれます。そういった意味でも、多様性を認めることを大切にしています。その多様性を活かしていくには、「論理」と「非論理」を行き来することがとても重要だと捉えています。論理的、科学的にエビデンスを追い求めていくのだけれど、その先に直感的な気づきや発見があって、そこから誰も考えたことのないような意外な結論に飛躍的にたどりつく。このような考え方をもって、気持センシングラボというプロジェクトを推進しています。
ぜひ、ODMの視点から、あるいは20代の若者としての視点から、気持センシングラボで取り組むことができる意外なアイデアをぜひ聞かせてほしいです。

薗田:私は学生時代にダンスをやっていたのですが、踊りにはいろいろな効果や可能性があると思います。感情表現によるストレス発散の効果もありますし、能動的に体を動かすことによって、印象や記憶が定着しやすくなるという実験結果もあります。例えば、広告とイベントスペースを組み合わせ、そこでダンスのように身体を動かしてもらうような仕組みをつくれば、広告効果が高まるかもしれません。

山口:なるほど、体験価値を創出するということですね。そして、その効果を生体反応で測定すると。おもしろい試みだと思います。

:私は、ODM広告の効果はロケーションや行動文脈によって大きく左右されると考えています。例えば、デートしているときに見た広告の印象は、ほかの場面で見たときよりも強くなるとか、長時間電車に乗っていて、そこから解放されたときに見た広告は記憶に残るとか。

薗田:電車に乗っていて腰の痛みを感じていた人が、降りたときに腰痛をケアする商品の広告を見たら、絶対印象に残りますよね。

:そうそう。人間の印象や記憶の構造って、わりとシンプルなんじゃないかと思うんです。その構造をしっかり理解することができれば、それに合わせた効果的なプランニングができるはずです。テクノロジーによってその構造を明らかにしていくことが気持センシングラボならできると思います。

秦雄治

山口:これまで気持センシングラボにODMの専門家はいなかったので、二人の参加によってラボの可能性がさらに広がると思います。専門性は異なるけれど志を同じくする人たちが集まり、新しい価値を生み出すために切磋琢磨していく。それが何より大切だと僕は考えています。最後に、今後に向けた意気込みを聞かせてください。

:ODMの視点から気持センシングラボを活性化させながら、その成果をODM広告にいかしていく。そんなサイクルがつくれるといいですね。ODMは、TV、デジタルに次ぐ第三のメディアであると言われています。そのメディア価値を上げていくために、ラボの皆さんの知見をぜひ学ばせていただきたいと考えています。

薗田:私が博報堂DYメディアパートナーズに入社してからの3年の間にもODMを取り巻く状況は大きく変わっています。ざっくり言うと、デジタルの方にどんどんシフトしているということなのですが、先ほどお話ししたように、デジタル広告の指標だけでODMの価値を捉えることはできないと私は考えています。気持センシングラボの「生活者のことを真に理解する」という視点を、ODMの領域に生かしていく道筋を見つけてきたいと思います。

山口:僕が気持センシングラボに取り組んでいるモチベーションの一つが、「広告の再定義をしたい」ということです。かつての広告には文化を生み出す力がありました。しかし現代において、広告はときにノイズと捉えられるようになっています。今の時代にあって本当に人々に受け入れてもらえる広告をつくるために、一緒に力を合わせていきましょう。

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