Vol.3 Share on Facebook Share on Twitter

『経営戦略としてのDE&I推進に向けて』 泉社長x早稲田大学長内教授対談Vol 3

泉社長と早稲田大学ビジネススクール教授の長内教授のお二人による大広のDE&I推進に向けての対談。
前回の第1回「不確実性への対応において重要なDE&I」、第2回「“性差を感じない”働き方ができる会社へ」に続いて第3回をお届けします。
第1回の記事はこちら→『経営戦略としてのDE&I推進に向けて』 泉社長x早稲田大学長内教授対談 Vol 1 第2回の記事はこちら→『経営戦略としてのDE&I推進に向けて』 泉社長x早稲田大学長内教授対談 Vol 2


「出る杭」としてのダイバーシティ

ユニークな人をもっと受け入れる会社へ

泉社長:役員向けWSを受けて感じたこととしては、普段から、ジェンダー、ダイバーシティを割と意識している方だと思っていたんですが、より深いテーマなんだと思いました。性別、国籍などの表層的なもの以外にも、その人が経験してきたこと、育った環境とか、趣味嗜好いろんなものが多様性の中に含まれる。これは本当にこれから意識して導入していきたいです。
例えば、学生の定期採用するとき、やっぱり画一的になりがち。地頭が良くて、コミュニケーション能力が高くて、プラスガッツがあって、というような人たちが入ってきて、1年目から優秀。でも、やっぱりみんな同じ意見、同じ思考回路に陥りやすい。大広の仕事はこう、というのを理解する能力が高いので、そういう点では一定の意味があるんですけど、「ユニークな子」が入ってこない。そういう人たちの意見こそ、私たちが気づかないアイディアがあったりします。
冒頭で女性の話をしましたけど、もっとダイバーシティを広く捉えて、大学名を捨てるとかではなくて、変わったところがある、ユニークな人たちを受け入れるようなことをやっていかないとな、とは強く思った。それが、深くて広いテーマだな、と感じたところです。

長内教授:イノベーションって、ペリフェラル(周辺)なところから起きることが多い。本流の人は本流として必要なんですよね。組織として支える。でも非連続であっと驚くようなイノベーションって、ペリフェラル(周辺)なところから起きるので、ある種変人がいてくれるっていうのは、会社を実は持続的に支えていくという意味で非常に大きい。人類とか生物の遺伝子の突然変異っていう主流じゃない存在がいるからこそ、変化に対応できて生き残ってきたわけですよね。そう考えると突然変異を起こせるような人が会社の中にいてほしいし、それを採用するって考えると画一的なやり方では難しいわけですよね。

泉社長:そうなんです。
我々も学生から選ばれているわけですけど、我々が選ぶ際も視野を広げていかないと。今までは画一的な人が入ってくるような制度だっただろうな、と思います。先日のWSで「効果と効率」の話もして頂きましたけど、効率面ではすごく良いです。生産性も上がるし、「あれやろうぜ」と言ったらみんな同じ頭でやっていける。でも、新しいものを生み出したり、というのがすごく苦手な集団になっていると思う。広告会社が本来得意とするべき分野が弱くなっているのは、画一化も一つの原因になっている気がします。
昔はすごく変な人がいっぱいいたんですよ。広告会社って。本当に。会社に全く来ないけど、なんか集中して取り組んだらすごい成果出したり。

長内教授:人気業種であるがゆえに、何らかのふるいをかけないといけない時に、画一的なフィルターがかかっちゃってるという可能性は高いですよね。

泉社長:まさにその通りです。採用に携わってくれているメンバーも、これでいいのかな、と感じていて、今までならこの子取ってたよな、となっていたところを、でもこっちの子新しい風がありそう、となった時、後者が選ばれるように今はなってきています。

長内教授:先ほど仰っていたようにトップの話だと思うんです。
トップのある種覚悟みたいなものが会社に伝わるかどうか。ある会社のダイバーシティ推進室長さんがいろんなところで大胆な発言されていて、先進的な取り組みをされているので、「なんで、こういうことがこの会社でできるんですか?」と伺ったことがあります。「社長に背中を守ってもらえているという感覚があるからです」と仰っていたんです。例えば、人事にしてみても、採用活動をしていて、「こんな変わった人を採用しちゃって、後で現場から怒られたらどうしよう」というのもあると思うんです。でも、そこを「ユニークな人を採りなさい」と社長に背中を支えてもらっていると思ったら、ユニークな人を採れるようになるかもしれないです。

泉社長:そうだと思います。そういうのをぜひ、採用だけではなく、研修もそうだし、ある意味全てのところで広げていきたいです。

失敗から学ぶことをプロセスに組み込む

長内教授:先ほど話に出していただいた「効果と効率」の話ですが、効率っていかに無駄を減らすか、いかに失敗をしないようにするかという話なんですけど、効果はそういう尺度ではないんです。むしろ、計画的に失敗を許容するようなプロセスがある。会社に大きなダメージを与える失敗はある程度防がないといけないけれども、ある程度失敗から学ぶということをプロセスに組み込むということでもあるので、そういう意味でいうと、採用もある意味失敗してもいいのかもしれないですね。

泉社長:大広の社員はみんな優秀だし真面目だしいい人。これは強みでもあるのですが、「いい人」は、ある側面から見ると弱みにもなります。個性が似ていることも同じで強みにも弱みにもなりますね。

長内教授:優秀なのは悪いことではないんですが、同じ方向で優秀だとベクトルの幅が狭すぎるんです。昔、私はSONYに勤めていて、もともとSONYが好きで、古い話を調べていたのですが、昭和44年に新聞広告で社員を募集したことがあります。「出る杭求む」という新聞広告です。今話していたのは、まさに「出る杭」ですよね。出る杭をどれだけ集められるか。実際、SONYが経営が苦しい時期もあって、それまでSONY本体から社長がでていたが、CBSソニー出身の平井さん(後のSONY社長)という「出る杭」が社長に就任したら業績が回復した。そこにダイバーシティの力があった。
できるだけいろんなカルチャーをあわせていく、ダイバーシティの力というのは大きいと思うんです。特にクリエイティブはさんでいるとダイバーシティの力が必要になると思います。

■プロフィール

長内 厚(おさない あつし)
早稲田大学大学院経営管理研究科 教授

1972年、東京都生まれ。
1997年、京都大学経済学部経済学科卒業後、ソニー株式会社入社。ソニーにて10年間、商品企画、技術企画などに従事、商品戦略担当事業本部長付を経て京都大学大学院に業務留学。博士号取得後、神戸大学准教授、ソニー株式会社外部アドバイザーなどを経て2011年より早稲田大学准教授。2016年に現職。ハーバード大学客員研究員や国内外の企業の顧問も務める。2023年より総務省情報通信審議会専門委員。ニュース、情報バラエティなどテレビ出演多数。ダイヤモンドオンライン、with digital(講談社)連載中。近著に「読まずにわかる!『経営学』イラスト講義」(宝島社)がある。フジテレビ「LiveNewsα」コメンテーター。世の中の様々な事象を経営学を使って読み解く、YouTubeチャンネル「長内の部屋」を開設し発信中。

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