vol.9あの人もにんプリフレンズ

映画監督&脚本家 安田真奈さん

女性の視点で愛情と絆を描くママ監督
OL監督時代を経て、転職、劇場デビュー、そして出産と夢を実現してきた「ママ映画監督」。
日常にかくれる小さな幸せも丁寧に描き出す、安田監督ならではの細やかな視点に満ちたメッセージです。

第1章 とにかく映画が最優先だった日々。

「愛情や絆を描く人は、自分の家族も大事にしないとね。
じゃないと、作品が嘘になるから。」

[幸福(しあわせ)のスイッチ]監督・脚本を担当DVD発売・レンタル中 C 2006 「幸福のスイッチ」製作委員会 見出しは、映画業界の先輩がおっしゃった言葉です。当時の私は、30歳。メーカーで働く傍ら、睡眠を削って映画製作に熱を入れ、家庭を後回しにしがちでした。あぁ、これは私の座右の銘にすべき言葉だな、と思いました。
やがて脚本や映像製作を頼まれることが増え、32歳で退職。収入は減りましたが、心のゆとりが生まれ、家庭は穏やかになりました。
が…長年構想をあたためて脚本を書いた【田舎の電器屋を舞台にした親子物語】が、「地味すぎて集客できない」とあちこちに劇場映画化を断られ、迷走状態に。確かに地味な設定ですが、田舎の電器屋さんは、お客さんの鍵を預かって留守中に修理したり、工事が終わったらお客さんに風呂や食事を勧められたりと、この世知辛い現代にビックリな熱いエピソードがいっぱい。「絶対、オリジナリティのある映画になる!」と、逆に燃えました(笑)。深夜ドラマの監督・脚本や、NHK中学生日記脚本、映画「猫目小僧」脚本などの仕事をしながら、色んな電器屋を取材して、時にはお店を手伝って、何度も何度も改稿…。3年たってようやく、上野樹里さん×沢田研二さんという素晴らしいキャストで、電器屋の映画「幸福(しあわせ)のスイッチ」を撮影できました。

やりたいコトと、産みたい時期と。年をとっていくことの焦り。

映画化が決まらない3年の間、33歳、34歳、と年をとっていき、焦りました。年齢が上がれば妊娠の確率にも影響が出ますし、育児は体力勝負、早く産むにこしたことはありません。でも、悲願の劇場映画を撮らないうちは、妊娠・出産に踏み切れませんでした。改稿がはかどらない時は、手にペンで「子ども」と書いて、「これを撮らなきゃ子どもにたどりつけない!」と、気合いを入れたことも…わ、我ながら、怖い…!(苦笑)
そんな執念(!?)が実ったのか、「幸福(しあわせ)のスイッチ」撮影後、すぐ懐妊しました。なんと出演者の本上まなみさんも同時に懐妊、出産は一日違い。舞台挨拶などは、二人とも大きなお腹で乗り切りました。私は5か月くらいまで周囲に言わなかったので、「安田監督は急に太ったのか?それとも妊娠か?」と、関係者は噂していたそうです(笑)。

第2章 「喜びもストレスも、育児の全てが、脚本に活きる。」

オモチャ工作で息子と遊ぶ。

[マタニティブック]おなかがだんだん大きくなる様子などを記録 [ミニキッチン]息子のために作った手作りオモチャ妊婦時代は、マタニティブックを作り、育児書で予習し、もう毎日ワクワクしていました。切迫早産で少し入院したものの、基本的には経過順調。しかし出産途中、息子の心拍が半分まで落ちて、緊急帝王切開に。「陣痛と手術の痛みのフルコース」でしたが、36歳でやっと出会えた息子は本当に愛おしく、この世にこんなに嬉しいことがあるのか、と驚くほどでした。

待望の育児生活の到来ですから、子育てを満喫しよう!と張り切りました。
子どもの面白い行動を絵日記にしたり、服を手作りしたり、オモチャをアレコレ作ったり…。オモチャ作りは、息子が4歳になった今でも続いています。既製品は高価で、すぐ飽きることも多々なので、100均アイテムやダンボール、リサイクルグッズで安上がりに工作するのです。例えば…
「落としぶたをコンロ風に、ザルをシンク風に、ティースプーンを蛇口風にカゴに取り付けて…【ミニキッチン】」。収納できて便利。
「水切りプラスチック網に、底を切ったハート型カゴを結束して…【なんちゃってバスケットゴール】」。延々、ボールを投げ入れて遊びます。
「箱を家の形に組んで、トイレ型灰皿をトイレに、石鹸ケースの蓋をバスタブに。フェルトを絨毯風に敷いて…【人形の家】」人形を喜んで片づけます。
100均の「椅子用ソックス」を怪獣の手足に見立ててリュックに取り付けた【怪獣リュック】も、非常に気に入ってくれました。
アレコレ作って楽しんでいるせいか、息子は「ママ、買って」と言わず、「ママ、作って」と言います。これがいずれは「ボク、作る!」になるかも?と、ちょっぴり「工作男子」を期待しています。

予想外の「睡眠障害」「育児ウツ寸前」を通じて。

[怪獣リュック]息子のお気に入り!100均の椅子脚ソックスを使って乳児の頃も脚本仕事を続けていましたが、待機児童が多くて保育園に一年半入れませんでした。仕事がはかどらない、託児代で赤字になるなど、悩みは尽きませんでしたが、「いつかこの苦労もネタになるはず!」と自分に言い聞かせました。
辛かったのは、「夜泣き地獄」。夜泣きは通常数ヵ月で落ち着きますが、息子は、「2歳手前まで毎晩4、5回起きる」というツワモノだったのです。お昼寝も少ないし、朝から夜まで元気イッパイ。
健康は有難いのですが、約二年もちゃんと寝ないと、さすがに限界です。私は睡眠障害に陥り、育児ウツ寸前になりました。
その頃よく、ママ友たちと語り合いました。「昔は、児童虐待のニュースに『信じられない!』って怒ってたけど、育児の大変さを知ってからは、紙一重だなって思うよね…」と。私は周囲の理解と応援のおかげで大事に至りませんでしたが…もしも夫と不仲だったら?ママ友がいなかったら?子どもが泣くたび隣から「うるさい!」とどなられたら?……
ストレスを子どもにぶつけていたかも……???

先日、NHKで児童虐待テーマのドラマ脚本を書きました。取材を経てわかったことは、「最初から虐待したい親なんていない」ということ。ほとんどの親が、痛みに耐えて産み、愛らしい名前を考え、一生懸命育てます。それが、育児環境の厳しさや、経済的困難、家庭内不和、孤立などによって精神的に追いつめられ…子どもにあたってしまうのです。虐待は、「遠い世界の犯罪」ではなく、「意外と身近にある過ち」なのです。
ドラマは、「娘を虐待した経験のある母親(石野真子さん)が、階下に越してきた若い母親(谷村美月さん)が虐待中であることに気づき、手を差し伸べようとする物語」になりました。タイトルは「やさしい花」です。ドラマを通じて、多くの方が虐待問題に関心をもってくださったら、と思います。

妊婦さんに、オススメしたいこと。

育児は楽しいです。素晴らしいです。毎日が感激の連続です。でも、時には、しんどいこと、うまくいかないこと、辛いことも発生します。
「子どもを望んだのは自分…。授かっただけでも幸福なのに、愚痴なんて絶対言えない…。」 そんな風にストレスをためすぎず、悩みを打ち明けられる場や友達を持っていただきたいです。育児の悩みの多くは、ママ友と話すうちに、「なんだ、みんな同じコトで悩んでるんだ!」と気楽になったり、笑いに転換できたりするものですから。
にんプリを通じて、ママ友同士が交流できるとのこと。ぜひ、フル活用をオススメします!
自分がリラックスできる、笑顔になれる場所や相手を、たくさんたくさん、探して下さいね。ママが笑顔になれば、子どもの笑顔も増えますよ!

(寄稿:2011.08.23)

安田真奈さん プロフィール

映画監督・脚本家。奈良県出身、大阪府在住。
自主映画製作を続け、約10年のメーカー勤務ののち、映像業界へ。
2006年、上野樹里×沢田研二の電器屋親子物語、映画「幸福(しあわせ)のスイッチ」の脚本・監督で劇場デビュー。
2011年秋放送のNHKドラマ「やさしい花」脚本担当。
 
⇒安田真奈 MANA FILM 公式サイト
⇒映画「幸福(しあわせ)のスイッチ」公式サイト
(DVD発売・レンタル中)
⇒NHKドラマ「やさしい花」公式サイト
関西は2011年9月16日20時、
(再)9月17日10時5分放送。
全国は2011年10月10日14時放送。

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